大和魂の体現者 ラモス瑠偉

ブラジルからやってきた“大和魂”の伝道師による知的根性論

32年前、情熱の国ブラジルからサッカー狂の一人の若者がやってきた。彼は1989年に日本に帰化し、日本人・ラモス瑠偉となった。彼は卓越したサッカー技術、鋭い戦略眼、比類なき根性、愛すべき人柄、そして何より日本人が忘れかけていた“大和魂”で、サッカーファンのみならず多くの人々を魅了した。帰化から20年。さまざまな経験を経て、その生まれながらの熱き情熱と緻密な実践論に裏打ちされたラモス流リーダーシップ論を披露する。

コミュニケーションが足りない!

――ラモスさんが熱いスピリットを持っておられることは読者の皆さんもご存じだと思うのですが、誰に学んだのでしょうか?

いスピリットとは何を指しているのか自分ではわかりませんが、唯一あるとすれば「何をやるにしてもやるからには100%の力でやれ!」ということです。特に親に何かを教わったということはないのですが、中途半端な気持ちでは何をやってもダメだということは、小さい頃からよく言われていました。

幼年期から年中言われていると、やっぱり沁み付いちゃいますよね。サッカーに対する情熱は、これはもう、サッカーがとにかく好きだったということ。
好きで好きで仕方がない。だから頑張る。それから、12歳のときにお父さんが亡くなってからは、お母さんや家族を守るために必死でサッカーをしました。自分が頑張ることで家族を守れる。その一心でやりました。

――親とか上司とか先輩とか、年上からのアドバイスを最初から聞く耳を持たないという人が多いですね。最近は特に師匠と呼べる存在がいないという人が増えていると思いますが。

年上の人は自分より絶対に経験があるわけだから、先輩の話を聞かないなんて損ですよ。いろんな人生を送ってきた自分の経験から、後輩が同じ失敗をしないように、痛い目に遭わないようにと思って「こうしたほうがいい」って言っているわけだからね。それを聞くか聞かないかはその人次第ですが、大きな差になってくるでしょう。

サッカー界でもありますよ。経験ある先輩の話を若い人がみんな知らん顔している。先輩のことを無視している。
まあ、先輩の言っていることが若者にとって説得力があるのかないのか、それも関わってくるけど。

――会社でも同様なことがあります。

コミュニケーションが足りないよね。会社に入った人なら会社のルールがあってそれは守らなくちゃいけない。会社はそのルールで成功してきたわけだからね。それを聞く耳持たなかったら、成長しないですよ。入る前は聞いているようなふりをしていても、会社に入ったら安心してそれでおしまい。
会社のために必死でやるとか、会社のために何ができるのかというところまでなかなか行かない。

会社をクビになりたくないからとか、そんなことだけ。そこですよね、問題は。今はこの会社のお給料のおかげで家族を養っている。その恩返しとして、会社のためにどんなことでも真剣にやるっていう気持ちでやっているのかどうか。それが問題ですよ。上司のも問題もあります。

上司が部下とちゃんとコミュニケーションを取っているのかどうか。若い人の意見でもいいもの、取り入れるべきものがあるはずなんですよ。逆に上司がそれを無視していることも多いみたいですね。上司も「会社のために」って考えているかどうか。それが関わってくるんですよね。
「こいつ、なかなか切れるやつだ。俺のポジションを取られるかもしれない」
そんな考えではダメです。あとは、リーダーは口だけじゃなくて、行動で見せないといけない。リーダーとはだいたいそういうもんですよ。成功した人間はみんなそうです。

嫌われたって関係ない

――以前、武田修宏さん(現サッカー解説者、読売クラブ~ヴェルディとラモスさんとはチームメートとして活躍)がテレビで「ラモスさんに鍛えられた」と言っていました。かなり厳しくされたようですが、その裏にはフォローと言いますか、大きな愛情があったのでしょうね。

彼だけじゃなくて、藤吉(信次)選手、都並(敏史)選手、永井(秀樹)選手も厳しくした。彼ら4人とも日本代表に行ってくれた。これは僕のおかげだな(笑)。やっぱり彼らはかわいいし、力を持っていたからね。僕らは日本リーグ時代でもプロだっていう気持ちでやっていたし、全身で全力でやらないとダメだって、それはずっと言ってきたね。僕は中途半端なことは許さなかったから、昔からね!

だから、「そんなんじゃ、このくらいで終わってしまうよ!」とか、「それじゃ、もったいないよ!」とか、そこは厳しく言ったよね。嫌われたって関係ない!本人のためでもあるし、クラブチームのためでもあるし。
「おまえがたくさん点を取れば、うちのチームは優勝できるんだ!!」
そうやって厳しく言ってきたかな。

――勝ちたいという気持ちも、ビジネスで成功したいっていう気持ちも、気迫の部分は大きいと思うんです。ラモスさんは以前、1年間の出場停止処分(※)になったことがありましたよね。でも、ブラジルだったら当たり前のことだっておっしゃって、それほど勝つことに対する気迫が強いんだなと感じたんですが。

あのとき、僕が失敗したのは日本の文化を知らなかったこと。誰も教えてくれなかったんですよ。そこはさっきの話と同じで、上司と部下とのコミュニケーション・ミスです。フロントは外国人に「日本では何をしてはいけないのか。」をしっかり教えなくちゃいけない。
「オートバイは乗ってはいけない。」「スキーはしちゃいけない。」「街でけんかしちゃいけない。」とか、「日本ではレフリーの判定は絶対に正しいんだから、つまらないことで文句は言わない。」「レフリーや相手につばをかけちゃダメだ。」とか、日本では当たり前と思っていることでも、外国人には当たり前じゃないことがたくさんあるんです。


もちろん、反則は反則。よくないことだったと思いますよ。でも、外国ならせいぜい2、3試合の出場停止。いきなり1年間出場停止っていうのはないですよ。だから、フロントが教えなくちゃいけない。
「ブラジルでは当たり前でも、日本では当たり前じゃないんだ!」と。

(※編集部注)
来日6試合目で、試合中にボールを追いかけた空中戦で相手の体にラモスさんの肘が入り、相手が倒れた。ラモスさんはこれによって退場処分となってしまう。オーバーアクションでもだえ苦しんでいた相手は、ラモスさんの退場処分の判定を聞いて、にやりと笑った。たいして痛くもないのに痛いふりをしていたのだ。これに怒ったラモスさんは、この相手をピッチ上で追い掛け回してしまう。これによって1年間の出場停止という、今では考えられない重い処分を受けてしまった。

――復帰して、いきなり得点王とアシスト王の2冠を取るんですよね。出場停止期間は相当に練習したんでしょうね。

もちろん。もっとうまくなりたかったし、このままブラジルに帰るわけにはいかなかった。
僕を日本に連れてきてくれたジョージ与那城さん(現JFLニューウェーブ北九州監督)の顔に泥を塗るわけにはいかなかったから。日本と日本協会が僕のことを誤解していると思ったし、もっとうまくなって僕はそんな人間じゃないってことを証明して、読売クラブに恩返ししたいと思っていました。

家族を守るためにも、ここで爆発しないと、と思いましたね。まさか、得点王とアシスト王の両方を取れるとは思っていませんでしたけど。でも、気持ちは「絶対取るんだ。」って思ってやっていました。

得点王とアシスト王とベストイレブン。それが取れなかったら、もう自分は終わりだっていう気持ちで死ぬ気でやりましたね。

――最近はちょっと怒られたり、レギュラーを外されたりしたら、それで落ち込んで、やる気をなくしてしまう人が多いですよね。

たくさんいます!でもまあ、そういう人には用はないですよ。すべて、気持ちですよ。怒られたからやる気なくすなんていう人は、何をやっても成功しないです。怒られて悔しいなら、「ようし、やってやろうじゃないか。必ずあんたの口からほめ言葉を言わせてやるぞ!」と、なんで思わないのか?
そう思える人が絶対に成功するんですよ。

――「なにくそ根性」なんて言いますけど、そういうのを持っている人が少なくなりましたね。
少なくなりました。サッカーの世界でも少ないです。昔はみんなもっとあったのにね。

何事にも真剣なラモスさんの姿勢は、このインタビューでも同様でした。常に100%で挑戦し、これまで培った様々な経験からリスクをしっかりと見極め、勝負どころでは勝負に出る。次回は、そんなラモス流“勝負の極意”について、お伝えします。常に真剣勝負の毎日をおくる経営者やリーダーは必見です!
投稿日:2009年1月14日
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