[トップインタビュー第2回]

経験のある人たちの価値観を変える方法

2013/2/27

株式会社メリディアンプロモーション
代表取締役 牛窪万里子

インタビュアー:越石一彦、構成:木村俊太)

ちょっとした練習で会話は上手になれる

フリーランスの女性アナウンサーたちの仕事を管理する株式会社メリディアンプロモーションを経営する牛窪万里子社長。彼女はサントリーで働いていた時、プレゼンテーションをはじめ人前で話すことに苦手意識を感じていたという。その苦手を克服すべく、アナウンススクールに通うとめきめきと上達し、NHKのアナウンサーに転職。その後、独立起業して現在に至っている。初対面の一般人にインタビューをする番組を長年担当してきた経験から身につけたという、初対面の人でも思わず本音を言ってしまう会話術とは。また、会話トレーニング法や女性が働きやすくなるためのコミュニケーション術などについて語っていただいた。

自分の失敗談を話して気付きを待つ

――牛窪さんはアナウンサーとして活躍しながら、他のフリーアナウンサーをマネージメントする立場にいますが、フリーの場合、企業とは違って御社への帰属意識というものが希薄になりがちなのではないかと想像します。そのような帰属意識の希薄な人たちを束ねるというのは、とても難しいのではないですか。

そうですね。弊社の場合、例えば所属アナウンサーたち皆が一緒に集まって仕事をするということはありません。ですから、束ねるというよりは、私と各メンバーと一対一のつながりが重要となります。横のつながりがない分、互いが互いを信頼する関係を作り上げるために尽力しています。

――信頼関係を強くするために実践されていることはありますか。

私自身がアナウンサーとしてやる仕事であっても、可能な限り一緒に現場に同行するようにしています。現場でクライアントに失礼なことがあっては大変ですし、困ったことがあればすぐにアドバイスできるようにしています。やはり、密に接する時間も長くすることが大切だと思います。

――トップも現場を知るというのは、一般企業でも必要でしょうね。いま、アドバイスというお話が出ましたが、所属されているアナウンサーの教育などもされるのですか。

もちろんです。もっとも、手前味噌になりますが、メンバー皆優秀なのであまり教えるようなことは少ないですが(笑)。ただし難しいのは、弊社の場合は、他の放送局で経験を積んでから入ってくるケースが多い点です。自分のスタイル、価値観ができあがった状態で来るわけです。

いい面でもあるのですが、それだけが正しいと思い込んでしまって失敗することがあります。この場合は直してほしいのですが、一度できあがった価値観を修正するというのはとても難しいです。

――それを変えるにはどのようにするのでしょうか。

一方的に指示するのではなく、自分で気付いて自分から直す方向に持っていくようにしています。

例えば、私自身の失敗談などを話して、「あなたには同じ失敗をしてほしくないからここはこうしたほうがいいと思う」と諭します。結局、自分で「変えなくちゃ」と思わない限り、変わりません。できあがった価値観を壊すということは、どうやって気付かせるかということだと思います。無理やり押し付けても変わらないですから。

――キャリアがかえって邪魔をしてしまうのですね。一般企業の中途採用の社員にも共通するところがありそうです。

はい。ですから、そのような人たちには、教育というよりは気付きを与えるという感じです。例えば「私ならこうする」「私はこうやってきた」ということを理由と一緒に伝えて、あとは様子を見ます。

時間がかかりますが、無理に押し付けてしまうと「それはあなたのやり方であって、私のやり方ではない」となってしまいます。本人がじっくりと考えて「ああ、こういうやり方もあるのか」と発見させることが大切です。

――具体的にはどのような気付きを与えることがありましたか。

例えば、アナウンサーのなかには「自分はアナウンサーであって、現場のスタッフとは違う」と勘違いをしていて協調性に欠ける人がいます。

しかし、これではいい番組は作れません。私もNHKに入ったときは、自分のことで精一杯だったこともあり、まわりのスタッフの動きや配慮にも気付かず、どこか傲慢なところもあったかと思います。それをNHKのスタッフの方々にさんざん指摘されましたので、その経験を話したりもしますね。

NHKで鍛えられた裏方の仕事を大切にする感覚

――アナウンサーという華やかな立場と、泥をかぶることが必要な場合もあるマネージメント業との違いに戸惑ったりしませんか。

アナウンサーというのは外から見ると華やかに映るようですが、実は裏方の仕事がとても多いのです。自ら番組を企画して取材をし、徹夜で編集作業に立ち会うとか、NHKの横浜放送局時代は、人数も少ないので私がテロップを入力したり、ロケ現場ではカメラさんや音声さんが使う三脚を担いで移動したりすることも日常的でした。生中継が終わった後のケーブルの片付けなどもやりました。

ですから、イベントの司会として呼ばれた際に、たとえ会場の運営側のお手伝いすることになったとしても、まったく違和感がありません。表舞台と裏舞台の両方を知っていることが、マネージメントをする上でも非常に役立っているのです。職場でも現場を知っている管理者は部下からの信頼にもつながると思います。

――先ほど、ご自身の経験を交えながら気付きを与えるとおっしゃったのは、そのようなところですね。

そうです。番組やイベントの司会であっても、映像のナレーションであっても、対談記事の進行役であっても、一つの役割に過ぎません。アナウンサーは決して主役ではないのです。関わるスタッフ全員で一つの作品を作り上げるという感覚が不可欠です。

これは組織経験があまりない状況でフリーランスになった若いアナウンサーたちに伝えてあげたいと思っています。

――話は変わりますが、メリディアンプロモーションでは、アナウンススクールも主催されているそうですが、どのようなことを学べるのですか。

コースは3種類あります。アナウンス基礎講座、ステップ講座、人を惹きつける話し方の3つです。

アナウンス基礎講座は、発声、発音、音声表現、滑舌、敬語、聞き上手、フリートークといったカリキュラムで、自分の声や話し方の特徴を知って、それを意識することで自分のウィークポイントを克服していきます。ステップ講座は、基礎を終了された方を対象に、さらなるステップアップを目指します。ニュース読み、ナレーション、インタビュー、司会、プレゼンテーションといったカリキュラムです。

人を惹きつける話し方講座は、社会人の方向けに、第一印象での自分の魅せ方、話の構成の立て方、会話のセンスアップといったカリキュラムになっています。営業職、接客業の方などにおすすめです。

――必ずしもプロのアナウンサーを目指す方向けというわけではないのですね。

はい。プロを目指す方の指導もしますが、普通のお仕事をされていて、自分の話し方をもっとよくしたいという方が多いですね。

――男女比はどのくらいでしょうか。

女性が圧倒的に多いです。

――女性の方が自身のスキルアップに対する向上心が高いのかもしれませんね。

そうかもしれません。あるいは、女性が社会で活躍できる場が以前よりも広がっているのかもしれません。

<最終回:いいコミュニケーションができれば、女性の社会復帰もうまくいく!>

インタビュアー:越石一彦、構成:木村俊太

投稿日:2013年2月27日
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