[トップインタビュー 第2回]

チームワークとエンジョイで勝てる組織をつくれ!

2011/6/3

帝京大学ラグビー部

監督 岩出雅之

(インタビュアー:越石一彦

前回は、帝京大学ラグビー部岩出監督の経歴と、平成世代の特徴について伺いました。今回は、その平成世代の力を引き出すための手法について、ラグビー部のチーム・スローガンを軸にお話を伺います。

学生主体のチーム作り

――前回に述べたチーム・スローガンについて詳しく教えてください。

うちのチームには2つのスローガンがあります。「チームワーク」と「エンジョイ」です。まずは、前回触れた「チームワーク」についてお話します。

ラグビーというと、自己犠牲というイメージが強いと思われる方もいるかもしれませんが、必ずしもそればかりを強要するわけではありません。いいところを持ち寄って、同時に足りないところを補い合うことでシナジー効果が生まれ、それが組織の質も高めることになります。

ただやはり組織ですから、当然、我慢すべきことも必要です。それまでは、母親との関係で我慢する必要がなかったことでも、他人との関わりのなかでは我慢しなければならないこともあります。そのようなことも、チームのなかで学ぶことになります。

そして、学ぶにあたっては、具体的なイメージとして可視化できる必要があります。学生が中心にいる組織ですから、学生自身が見本となって、主体者として活動するのです。そのためには、いかに上級生が見本を見せられるかということが大事になってきます。私たち大人の指導者が引っ張っていくのではなく、上級生や部員同士が中心軸に立って、自分たちで運営していく意識がないと、本当に強い組織にはなりません。

指導者はそれをどうやって実現させてあげるかに気を配るのです。責任感を持たせて、面倒なことや他人の問題など、モチベーションが上がりづらいことにいかに積極的に関わらせるかという点に気を配るのが、私たちの仕事です。そこからシナジーが生まれて、結果的にチームワークが生まれるのです。

――「学生主体」と言葉で言うのはかんたんですが、実際にやるとなるとなかなか難しいと思います。具体的にはどのような形でやられているのですか?

いろいろありますが、例えば「学生コーチ」という役職があります。学生が学生のなかから数名のコーチを選ぶのです。彼らは、私たち指導者と一緒になって、練習メニューを考えます。

自分自身の練習時間が割かれることになるので、選手としてのスキルの向上を犠牲にしなければなりません。それでも、学生を育てる最良の策として取り入れています。人に教えることで自分にも返ってくるということが学べますし、客観的な視点を持てるようになり、他人を気遣う目も養えます。そのような真摯な姿勢をもつことによってやりがいも生まれますし、みんなから感謝されることでさらに増していきます。

選んだ側も自分たちが選んだのだからしっかり協力しようという姿勢が生まれます。学生コーチに委ねすぎないように、学生コーチをどのようにみんなでサポートしていくかを考えるようになります。好循環ですね。ちなみに、去年の学生コーチの一人は、最後の最後でレギュラーポジションをつかみました。

――それはすごいですね。

努力はウソをつかないということです。

もう一つ、学年別の会議というものがあります。各学年にボードメンバーという学年代表を置いて、彼らが学年の意見をまとめて、ボード会議という場で全体に提案します。何か主張したいことがあれば学年別の会議で意見をまとめて、ボードメンバーを通してチーム全体にはかれる仕組みになっています。

――それは企業にもぜひ取り入れたい仕組みです。企業では若手の意見はなかなか通りませんから。とてもよい仕組みですね。

学生は「面倒だ」と思ってやっているかもしれませんが、これもトレーニングの一つなのです。前回触れたように「平成」の人たちは、「何して遊ぼうか」といった仲間と協議して何かを決めるという経験が少ないなかで育ってきています。思考の深さとか、リーダーシップとか、話し合う力というのが足りません。1年生からやって、学年が上がるにつれて徐々に養われていくわけです。

「平成」の若者はなかなか育たないという意見も聞きますが、同時に育てていないという側面もあると思います。待っていても勝手に育ってくれません。

「エンジョイ」とはプロセスそのものを楽しむこと

――もう一つの「エンジョイ」というスローガンはどのようなものですか?

「エンジョイ」は一般的に訳すと「楽しむ」という意味ですが、私たちが考える「エンジョイ」は少し違います。「楽しむ(ファン)」という意味だけではなく、より充実感の持てる考えとしてとらえています。よい結果を出したら嬉しいのは当たり前です。目標に向かってのプロセスを楽しむという考えです。
ここには「目標設定」の問題が関わってきます。成果を出すには目標設定が大事になりますが、このとき、義務的な目標を設定するのではなく、心から達成したい目標を設定するのです。すると、達成したい目標に向かう行動、プロセスそのものに喜びを感じられるようになるのです。「俺は今、あの目標に確実に近付いている」と思えば、はたから見たらきつい練習、つらい練習でも、本人にとっては楽しくなってきます。

――それはすばらしい手法です。私が属していた山一証券では、とにかく数字の目標を設定させられて、しかもがむしゃらにやっても全体の1割くらいしか達成できないような数字でした。達成できてあんどすることはあってもエンジョイすることはできませんでした。

それは「昭和」向けの手法です。みんなタフで、かんたんには潰れないという前提に立ったやり方ですから、それを「平成」の人にやってしまうと、会社はメンタル・カウンセラーを何人も置かなければなりません。

いまの子たちは、日々の楽しさがないとやりませんし、その楽しさのなかに価値がないと長続きしません。目標に向かう充実感をどうやって無理なく感じさせてあげられるかが、私たち指導者の腕の見せ所だと思います。

今回は、「平成世代」の力を最大限引き出すための手法について語っていただきました。次回は、目標設定の手法や岩出監督が考える組織マネジメントのポイントについて伺います。

<続く>

インタビュアー:越石 一彦

投稿日:2011/6/3

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