コラムジャパン株式会社 増田浩司

大ヒット商品は社長自らの実演販売から生まれた

ヘルシー志向に加え、経済的な理由から家で食事をする人が増えるなか、そうした人たちを支えるある商品が注目を集めている。コラムジャパンが輸入販売している「ルクエ スチームケース」だ。すぐれた機能性とおしゃれなデザインが相まって、2年半で100万個というまさに大ヒット商品。しかし、この大ヒット商品も何もせず売れたわけではない。しっかりとしたマーケティングのもと、的確かつ速やかな仕掛けによって、多くの人の共感を得たのだ。ユニークなのは、そのマーケティング手法。増田浩司社長自ら、店頭実演販売で顧客の反応を見ながら決めるという。その方法論の意味と具体的な戦略について迫ってみたい。

2年半で100万個の大ヒット商品

――まずは、御社の事業内容について教えてください。
当社は、オランダ企業のコラムインターナショナルBVの日本法人として1976年に設立した会社です。グループ会社を含めた様々な欧米の家庭用品メーカーと開発輸入を積極的に進めており、日本の消費者のニーズに対応した商品を提供することを事業の柱にしています。

――「ルクエ スチームケース」が大ヒットしています。今日は主にこのルクエの秘密に迫ってみたいと思っています。かんたんにご説明いただけますか?

ルクエ(Lekue)というのは1985年にスペインで生まれた家庭用品を製造販売する企業名であり、かつ今やヨーロッパではブランド名でもあります。スチームケースがあまりにも有名になったために、「ルクエ」というブランドが独り歩きを始めている感じです。この「ルクエ スチームケース」は、2008年4月より販売を開始し、2010年10月中旬現在、累積で97万個が販売され、このインタビューが掲載されるころには100万個(売り上げベースで約50億円)を突破しているものと思われます。

――まだご存じない読者のために概要を説明していただけますか?

ヘルシーな蒸し料理が電子レンジでかんたんに作れる調理器具です。先端技術から生まれたプラチナシリコンという素材でできていて、熱に強く、260℃まで使えます。260℃という温度はオーブンにも対応できますから、実際にはお菓子作りやパン作りなどが可能で、「蒸す」という枠をこえた利用まで広がります。

「ルクエ スチームケース」には主に4つの特長があります。一つめは「きわめて安全」であること。シリコンにもいろいろあるのですが、プラチナシリコンは医療機関における器具や乳幼児の口に触れる商品などに使われている安心素材です。

2つめは「幅広い耐熱性」。これは先ほど述べたように、マイナス30℃から260℃という非常に優れた耐熱性により、例えば下ごしらえした食材を冷蔵庫や冷凍庫で保存し、必要な時にそのまま電子レンジにかけることで、いつでもできたての料理が楽しめます。

3つめは「調理がかんたん」ということです。プロの料理人のテクニックも不要です。電子レンジやオーブンを使って、誰でもかんたんにプロと同じ味が出せるという利点があります。

4つめは「メンテナンスがかんたん」。油を使わずに調理ができ、料理が焦げつくこともなく高温に強いので食器洗浄機でかんたんに洗浄できます。また軽くてやわらかいので収納も手軽です。

年配の女性がくれたヒント

――「ルクエ スチームケース」のヒットまでの道のりにはう余曲折があったのでしょうね。
ルクエ社の商品を日本で扱い始めたのは、2001年からです。最初の商品は、シリコン素材の「ケーキ型」でした。従来の金属の商品とは異なり、軽くて扱いやすく型離れが良いことをセールストークとして売っていました。

――最初は、「ケーキ型」だったのですね。なぜ、ルクエ社の商品を日本に持ち込んだのですか?
調理器具にシリコン素材という組み合わせにピンときたのです。当時は、シリコン素材を家庭用品に活用することは珍しく、誰も注目していませんでした。

しかし私は、前職で形状記憶合金の用途開発にかかわる仕事をしていたことから、この新素材が革新的な価値をもたらすことを知っていました。非常に熱に強いとか、柔軟で耐性に優れているなどの料理器具としての優位性を素直に理解できたのです。ヨーロッパでのルクエ社の革新的な取り組みは、もしかしたら日本でも大ヒット商品につながると思いました。

――すでにヒットの予感はあったのですね。

はい。しかし当時は、「日本人は家でケーキを作らない。まして、ケーキ型は金属というイメージが定着している。シリコンなんて問題外である。」と誰も相手にしてくれませんでした。
今でも忘れませんが、藤沢(神奈川県)の東急ハンズで実演販売をしていたときのことです。もちろん、まったく売れませんでした。すると、そばでずっと見ていた年配の女性が近づいてきて、このようなことを言ったのです。
「あまりにもかわいそうだから、1個買ってあげるわよ。でもそれは売れないわ。オーブンじゃなくて、電子レンジで使える日常の調理用具にしなさい。そうしたら、売れるわよ。」

6時間立ち続けた実演の終わり間際に、お情けで1個買ってもらえたことにお礼をしました。それから、同じ実演パターンで数回続けていたのですが、その時の年配の女性の言葉がどうしても頭から離れませんでした。何かヒントをつかみかけていた感じでした

――それから、「ルクエ スチームケース」はどのような経緯で開発されたのですか?
早速、年配の女性からもらったアイデアをルクエ本社の営業マンに相談しました。「日本で売れるのは、電子レンジで使えるキッチンツールだ。そのコンセプトで新商品を開発してみないか?」。
もちろん、最初は聞き入れてもらえませんでした。実績もないのに、自分たちの意見を主張しても受け入れてもらえないのは当たり前です。なので、まずはルクエ社の別の商品で、日本の市場に適した商品を売りました。これが、セルライト(余分な皮下脂肪)を落とす効果が期待できる「スティミュル」という毛足の長いたわしのような製品です。50万個という大ヒット商品となりました。

――知っています。東急ハンズなどで女性が興味深そうに買っていく姿をよく見かけました。
やはり実績をつくると、逆に「日本ではどんなものが売れるのか」と聞いてくるのです。ようやく、シリコン素材を使った日本で売れるキッチンツールの開発に取り掛かることになりました。

試行錯誤の結果、「電子レンジで使える調理器具」よりも柔軟な発想で、「電子レンジを調理器具として使う」というコンセプトとなりました。従来の発想では、「電子レンジで調理する=単に料理を暖める」でしたが、シリコン素材を活用すれば、素材の水分やうまみを逃がさずにもっと大胆な高温度で調理することが可能となります。つまり、電子レンジでも本格的な調理ができるということに注目したのです。

また、ルクエ社の社長がチャビ・コスタという柔軟な考えの若手の経営者に変わりました。その社長が、これからは機能だけではなく、デザインも重要となる時代が来ると、積極的にデザイナーを採用しました。世界の頂点に立つエルブジという特別なレストランで永年プロダクトデザイナーを務めたルキ・ヒューバーを登用したのです。
このようにして日本からの電子レンジをいかす機能的な要求と、高性能のプラチナシリコンを利用した設計製造技術と、そして誰からも愛されるプロフェッショナルなデザイン性を融合させた「ルクエ スチームケース」が完成したのです。

今回は、コラムジャパンの会社概要、大ヒット商品「ルクエ スチームケース」の概要とこの商品と出会うまでの道のりについて語っていただきました。次回は、大ヒットの秘密や具体的な販売戦略についてうかがいます。

投稿日:2010年11月10日
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