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第4回 著作権侵害

著者:   乾 利之


著作権侵害への対応


著作権侵害した/侵害された、どちらの場合にも慎重な対応が必要です。

類似していれば著作権侵害?

オリンピック・エンブレムの問題でも、「類似」しているから侵害だ!という声が多く聞こえてきました。似ていると侵害になるのでしょうか?実は、似ているだけでは、著作権侵害になりません。

著作権は、独自に創作した著作物に対して個々に発生することになっています。つまり、独自に創作した著作物であれば、「同一」「類似」であっても、更には創作された時期の前後に関係なく、個々に著作権が生じます。このことから、単に「類似」しているからといって著作権侵害とはなりません。この点、注意が必要です。

著作権侵害となるためには、「類似」に加えて「依拠性」が必要になります。つまり、先に創作された著作物に「依拠(真似)」して創作された著作物であることが必要です。

単純化しますと、先にあった著作物を見て、「真似(依拠)」して創作され、その結果「類似」している場合には、著作権侵害になります。

依拠性

「類似性」は「客観的」な比較により比較的容易に判断できます。しかし、「依拠性」は「主観的」問題であるため、証明が難しいところです。そのため、「被告による原告の著作物へのアクセス可能性」、「被告の利用著作物と原告の著作物における表現の酷似性」、「原告の著作物の著名性、周知性」から間接的に推認することになります。なかなか大変です。
 
 ちなみに、問題になったオリンピック・エンブレム(取り下げ)は、仮に「類似性」が認められた場合でも、「依拠性」について証明されなければ著作権侵害になりません(そもそも専門家の間では「類似していない」という意見が多数でしたが。)。

著作権侵害への対応

他人の著作物について、上述の「類似性」だけでなく「依拠性」の要件も満たすと判断し、著作権侵害であると判断した場合、著作権者は、警告状を送付することになります。いきなり「訴訟」という場合は殆どなく、まずは、警告状を送付します。警告状の内容は過激な表現は避け、客観的に正しい事項のみを記載するように注意してください。警告状の内容が逆に相手側からの攻撃の材料になる場合があります。

警告状の記載内容としては、相手側の著作物(侵害)の特定、自分の著作物との比較(同一類似性の説明)、謝罪や賠償の要求等です。その他、今後の対応(ライセンス契約、訴訟)を想定し必要と考える事項を記載しておくことができます。上述しましたが、過激な表現や主観的な記載は避けるように注意してください。

著作権侵害への対応は慎重!が重要です。

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著者プロフィール

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乾 利之

企業の知財部員、特許事務所のパートナー弁理士として活躍後、IPNJ国際特許事務所を設立。弁理士、行政書士、MOT(技術経営修士)。知財コンサルティングや経営戦略・事業戦略立案の支援業務に注力している。

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