「退職勧奨」で解雇を回避する
遅刻・欠勤が多い、上司の言うことを聞かない、服務規律を守らない…これらの問題が改善されない社員を解雇するのは非常に難しいのが現実です。
解雇を言い渡した結果、本人が納得していない場合は、労働基準監督署に駆け込まれたり、労働問題専門の法律家やユニオンに依頼され、その対応に追われることになります。
解雇が有効とされるためには、「客観的に合理的な理由」があること、「社会通念上相当」であることが必要ですが、この認定は非常に厳しく、約1年ほど時間を費やした上で、多くの場合「解雇無効」となります。
そして「解雇無効」が確定すれば、一般的に解雇日から判決が確定した日までの賃金を支払わなければならなくなります。
したがって、できる限り「解雇」は回避して、話し合い(退職勧奨)による「合意退職」にもっていきたいものです。
退職勧奨のポイント
退職勧奨が、長時間にわたったり、頻繁に行われたり、相手の意思に関係なく一方的に行われたり、脅しや高圧的な態度で退職を強要したりして退職の合意をとりつけても、「退職無効」となってしまいますので、気をつけましょう。
そもそも解雇したいくらいの問題ある社員ですので、ついつい険悪になったりきつい物言いになったりしてしまいがちですが、話し合いで退職に合意してもらうのが目的であることを忘れずに対応して下さい。
退職に合意してもらう条件は、金銭であることがほとんどですので、解雇した場合のリスクやそのまま居座られた場合のリスクなどを勘案して、条件を決めて下さい。
退職合意書の取り交わし
退職が合意に至った場合は、必ず書面にします。後で「解雇無効」だと騒がれないとも限りませんので、口約束だけにならないようにして下さい。
退職合意書の内容については、「退職日」「合意退職によって雇用契約が解消されること」「合意した退職の条件」「お互いの債権債務がない(法律的に争う余地がないこと)」ことなどを確認します。
上記書式の文言のうち、第2項の「甲は乙に対し、離職理由については「会社都合」扱いとする。」は削除、第3項の「解雇予告手当」は解雇ではありませんので削除しておいた方が良いでしょう。
どうしても合意に至らず解雇する場合
退職勧奨したものの合意に至らず解雇しなければならないときは、解雇通知書を作成します。
解雇通知書には、「具体的な問題行動」や「指導履歴(日付と指導内容)及び指導に対する本人の反応(改善の様子)」「就業規則の解雇の根拠条文」などの内容を、できる限り詳細に記載します。
そうすることにより、問題社員が会社と争うことを諦める可能性もありますし、相談を受けた専門家やユニオンも難しい(勝てない)案件だと判断し依頼を受けない可能性もあります。
また、解雇通知書の提示の際も、解雇よりも有利な条件を提示して退職勧奨を促すことにより、解雇を回避する努力をしておくべきでしょう。