労働時間を社員に記録させる
未払い残業代の請求や労働基準監督署の臨検の場合、労働時間の客観的なデータとして、タイムカードやパソコンのログ履歴を見ることになりますが、これらに記録された出社時刻からすぐ仕事に取り掛かり、退社時刻まで仕事をしているとは限りません。業務終了後、会社に残ってパソコンで私用をしているということもあるでしょう。
しかし、これら以外に会社として、社員の労働時間の記録がとられていない場合には、これらが証拠として採用されてしまいます。
それを防止するためにも、勤怠管理表に始業時刻、終業時刻、休憩時間、残業時間の実態を正確に社員に記録させ、それを毎日、管理職がチェックするようにしましょう!
社員自らが記録し、管理職がチェックする意義
勤怠管理表を社員本人に記録させる上で、「出退勤時刻と実作業の開始終了時刻である始業終業時刻は違うこと」「休憩時間はこまめにカウントすること」など、労働時間の考え方を明示し意識づけます。
また残業時間も本人に計算させることで、どれだけの残業を行っているのか?を本人に意識づけします。
そしてそれを管理職がチェックすることで、部下の残業の実態を把握できるとともに、残業の理由や残業量が多くなる原因に対する適切な指導を行うことができます。
勤怠管理表というツール一つを使うことで、労働時間に関する指導やコミュニケーションが行われるので、労働時間の削減にも効果が出ます。
管理職の時間管理意識を高める
厚生労働省のホームページに、「時間外労働削減の好事例集」という資料がアップされています。その中の「時間外労働削減の取組実施と人件費の変化」についての調査結果を見ると、「人件費が減った」と回答された率が最も高かった取組みは、
◎時間管理が評価される管理職人事制度の導入:14.0%
◎時間管理が評価される一般従業員人事制度の導入:12.2%
でした。
残業時間の削減の仕組みとして、「残業の事前申請や許可制」の導入があります。この制度を成功させるためには、
①許可のない残業は認めないことで、事前申請を徹底させること
②申請内容の適正なチェックをすること
が必要となります。
事前申請が徹底されても、申請内容を適正にチェックしなければ、申請の手間が新たに増えただけで、残業時間は減りません。部下の抱えている業務量と必要工数、これまで費やした工数、納期…これらを勘案して、残業させるべきかどうかを適正に判断することが必要となります。
しかし、実際には管理職がそこまで部下の労働時間管理をしていないことが多いですし、そもそもその意識すらない場合も多いのが実情です。そこで、管理職の評価項目の中に、「部下の時間管理」を入れ、昇進昇格・昇給、賞与と連動させることで、
①部下の時間管理も重要な仕事の一つであることを認識させる
②部下の時間管理が適正にできれば、評価が上がることを認識させる
③管理職毎の部下の時間管理状況を、会社としてキチンと把握する
④その結果を管理職にフィードバックする
ことができ、結果として残業時間の削減をすることが可能になります。
全社的な「残業時間削減」の取組み
会社として「残業時間の削減」の方針を大きく掲げ、強い姿勢で取り組むことも重要です。
伊藤忠商事、リコーなどの大手企業では、午後8時以降の残業を原則禁止する制度を導入しています。業務量にかかわらず退社時刻を定めてしまうと、「持ち帰り残業」が増加する可能性も否めませんが、労働時間の上限を設定することで(本来は36協定で設定されているはずですが…)、限られた時間の中でいかに業務をこなすか?を考えるようになります。
また、労働時間が多くなってしまう原因を調査し、やる必要のない業務を明らかにしたり、会議のあり方を改善したりするなど、会社全体での取り組みをすることにより、経営側の決意を見せることも大事です。