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第4回 遺言書を書く際の注意点

著者:名古屋ブレイブハート法律事務所 弁護士  伊藤 勇人


トラブルを未然に防ぐために、遺言書はあるにこしたことはない

4週に渡り、弁護士が遺産相続に巻き込まれない秘訣を伝授してきたこのコラムですが、「遺言は書いておいた方が良い」という結論になった方も多いと思います。

近年、ご自身で遺言書を作成する方が増えてきております。これを「自筆証書遺言」といい、全て自筆で書かれたもののみが有効となります。
遺言書を書かれた方が亡くなられた後に、亡くなった家庭裁判所で「検認」をうける必要があるのですが、この件数だけでも、ここ5年で1万6000件と2割伸びとなっています。

「自分でも簡単に作成できるのか。」と安心された方もいらっしゃるかと思いますが、合理的な考え方に基づいて遺言書が作成されていない場合、その遺言書は無効となりますので十分注意して書かれるようにして下さい。

自分でも作成できる遺言書「自筆証書遺言」とは?

自筆証書遺言は、ご自身で気軽に作れるという事もあり、多くの方が作成されているようです。
もっとも、遺言は権利の主体者がいなくなってしまってから法的効果を生じさせるという法律上とても変わった制度であるため、それを自筆で認める場合は厳格な要件が定められております。
私自身も「自筆証書遺言」のチェック依頼を受けることが多々ありますが、2~3点方式違反を見つけることは珍しくありません。

例えば、字が下手だからという理由でワープロで書かれる方がおりますが、その名の通り”自筆”でなければならないので、自筆以外の自筆証書遺言は全て無効となります。
また、認知症や要介護認定を受けている場合など、死亡直前に作成された遺言については、遺言するだけの能力がないのではないか、遺言に誤字脱字や曖昧な言葉があり「長女に全てを任せます」など、いかようにも意味が受け取れる場合に、その文言をめぐって毎年たくさんの遺言無効確認訴訟が提起されています。

せっかく作成されたとしても、この様なトラブルに巻き込まれるケースは多々ありますので、ご自身で十分な注意が必要となります。

今回ご紹介する遺言書の記入例もあくまで参考程度にとどめて頂き、ご自身で作成される場合は、必ず自筆で記入するように致しましょう。

遺留分を侵害する遺言書を作ってしまったら?

前回に続き、遺留分を侵害する遺言書を作成されるケースがあります。
これにより、思わぬ遺産相続トラブルに巻き込まれるという場合が発生します。

遺言を作成するポイントとしては遺留分を侵害しないように気を付けるということが重要ですが、仮に遺留分を侵害する遺言書を作成する場合は「付言事項」を作成して、遺言者の意思を尊重して欲しいと感情的に訴えるというのが一つの手として存在します。

遺言書記入例(付言)

付言事項は感受性豊かに、且つ合理的な理由もつけて記載しなければなりません。
また、記載したからといって、遺留分減殺請求をされないとは限りませんので注意して下さい。

遺言書の内容を確認する公証人は、長い付言事項は嫌がりますので、腕のいい弁護士など慣れた専門家によく相談して遺言に付言事項をつけることをオススメ致します。

トラブルにならないために、弁護士からアドバイスできることは

4週にわたってご紹介をさせて頂いた「相続トラブル」に関するコラムですが、私の経験からアドバイスできることは、生前に財産の分け方を相続人に話をしておき、遺言書を書いておくことだと思います。

中には「相続する特別な財産もないし、子供たちも仲良く暮らしているから大丈夫」と安易に考えがちな方もおりますが、長寿国日本では相続人もまた壮年期・高齢期に差しかかる方が少なくありません。このため、子供の学費や住宅ローンの返済など、それぞれの家庭事情や介護の問題も相まって感情的対立を招きやすいのが相続の特徴です。

死後に不動産の価値がそこそこあり、その不動産をどの様に相続するかがきっかけで兄弟同士が絶縁になってしまったなんてことは少なくありません。

私が願うのはただ一つ。相続は笑顔で終わることが一番です。そのためには、事前に相続される資産価値は幾らか、相続税はいくらか、相続人同士でどの様に分配するのが良いかについて、しっかり話し合いを設けることが重要です。

生前からトラブルになるような事があれば、弁護士や司法書士、税理士といった専門家に相談されることもよいでしょう。

ただし、ちまたには「相続コンサルタント」を名乗り紛争性のある相続に介在しようとする方も多いため、依頼先の専門家にそれだけの資格があるのかについても吟味するようにして下さい。

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著者プロフィール

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伊藤 勇人

名古屋ブレイブハート法律事務所 弁護士

中小企業のみなさんの個人的なお悩み(離婚、夫婦円満調停、養育費、資金繰り、相続、債権回収、クレーマー対策、従業員との関係、お子さんのこと)に「名古屋の法律サポーター」として、取り組んでいる。

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