第1回 良い事業計画書の条件とは?
専門家に学ぶ!シーン別事業計画書の書き方
経営コンサルタントとして、年間100本以上の事業計画のレビューや、ビジネスプランコンテストの審査員などをしています。
「良い事業計画書」の条件を5つ挙げます。
<条件1>17の要素が網羅されていること
- エグゼクティブサマリー
- 事業立ち上げの経緯
- マネジメントチーム
- 会社概要
- 企業理念・事業理念
- 商品・サービスの概要
- 儲けの仕組み
- 市場および競合の分析
- マーケティング・販売戦略
- オペレーション計画
- 人事戦略
- 立ち上げ戦術
- 成長戦略
- 出口戦略
- 財務計画: 売上予測、コスト計画、資金繰り計画、資本政策
- 事業リスク管理
- プロジェクト管理
特に、
7.儲けの仕組み
12.立ち上げ戦術
17.プロジェクト管理
は抜けている事業計画書をよく目にします。
<条件2>20秒で説明できること
誰でも自分の事業には色々な想いがこもっているので、
長ければ10時間でも話せるとは思います。
しかし、実戦では20秒で説明できないといけません。
なぜ20秒かというと、事業計画を説明する場面で最も多いのが名刺交換だからです。
通常は20秒しか持ち時間はありません。
また、20秒でないと先方の社内で口コミが発生しません。
20秒、つまり、キーワードで言うと2つぐらいでないと、口頭で説明しにくいので、投融資担当者は社内稟議を通しにくいのです。
事業計画は本来複雑なものですが、簡潔に事業の特長を表現できるように事業計画を洗練しましょう。
<条件3>明日の朝9時に何をすべきかが分かる
計画は実行できないと意味がありません。
事業計画書の多くは3ヵ年~5ヵ年の長期的な時間軸のものが多いですが、たとえ5年先の目標を見据えていようとも、「では、今は何をすればいいのか」を
事業計画書を読んで分かることが大切です。
事業計画書にはどんなに高度で抽象度の高い戦略が書かれてあっても、結局は次のタスクが具体的に明らかにされてこそ実行力につながります。
「17.プロジェクト管理」のセクションに、スケジュール表やタスク管理表が盛り込まれ、
経営者自身や社内スタッフがすぐに動ける事業計画がいいですね。
<条件4>売上仮説がファクトとテストで徹底検証されていること
事業計画書で最も大きくハズれやすいのが売上の計画です。
ハズれる原因の多くは、
8.市場および競合の分析
9.マーケティング・販売戦略
15.財務計画: 売上予測
が仮説のレベルで止まっているから。
仮説で終わらせるのではなく、ファクトの調査とテストで仮説を検証しましょう。
ファクトの調査とは市場規模や競合の売上高などの客観的事実を調べること。
テストとは商品やサービスのプロトタイプを開発し、試用テストだけではなく、本当におカネを払ってでも買ってもらえるかを検証することです。
良い事業計画書の記述を読むと、まだ仮説段階の綺麗なロジックは少なく、ファクト収集とテスト実行が多く記述されています。
<条件5>経営者としてのリアルさがにじみ出ていること
経営者としてのリアルさとは3つ。
■土地勘 ≒ 業界人脈、ノウハウ、経験
投資家がその事業を自分でやらずにわざわざあなたに託すのは、あなただけしか持っていない土地勘があるからです。
■下振れをリカバリーする力
事業計画が予定通りにいくことは滅多にありません。
その現実を経営者自身が分かっているかどうかが重要です。
計画が下振れしても当初の目標に近い結果を出せるリカバリー力が問われます。
■物語性のあるエピソード
事業計画の読み手が興味を持つのは「結局、どんな人がやってるの?」ということ。
事業への思い入れや人柄を表現するために、エピソードを物語にして強く印象づけられることが大切です。
ガイドのポイント
「良い事業計画書」の条件は
■17の要素が網羅的にカバーされていること
■20秒の名刺交換バージョンで説明できること
■明日の朝9時に何をすればいいかが分かること
■売上仮説が徹底検証されていること
■経営者としてのリアルさがにじみ出ていること