先日、首相が、同一労働同一賃金の実現に向けた検討会を設けて、パートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法の改正を軸として具体的な法制度の在り方を検討するように指示したという報道がありました。

同一労働同一賃金という考え方は、労働法の分野ではよく聞くフレーズとなっていますが、具体的にはどういう影響が考えられるのでしょうか。

雇用形態の相違などが加味されなくなるのではないかといった懸念なども示されていますので、一度、現時点で検討されつつある同一労働同一賃金について解説したいと思います。

1.同一労働同一賃金とは?

「同一労働同一賃金という言葉だけを聞くと、アルバイトでも正社員でも派遣社員でも、同じ内容の労働をした場合には同じ賃金を支払うという意味に聞こえますが、本当にそうなっていくのでしょうか?」

「なぜ政府が、同一労働同一賃金を推進しているかというと、昨年成立した『労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策の推進に関する法律』というものが関係しています。」

「どんな内容なのですか?」

「同一労働同一賃金推進法という略称で呼ばれていますが、定められている内容はそう単純なことにはなっていません。まず、同一労働に同一賃金が支払われるべきと定めている条文はなく、具体的には、『労働者が、その雇用形態にかかわらずその従事する職務に応じた待遇を受けることができるようにすること』を基本理念としていると定めているにとどまります。」

「職務に応じた待遇の確保とは?」

「この法律で定められているのは、通常の労働者とそれ以外の労働者の待遇に係る制度の共通化の推進と正社員と派遣労働者の間の業務内容、業務に伴う責任の程度その他の事情に応じた均等な待遇の実現を図るものとされています。」

2.今後の方向性は?

「単純に労働の内容や労働時間のみではなく、責任やその他の事情も加味できるのは分かったのですが、今後はどういった方向性で検討されていくのでしょうか。」

「これまでは、正直なところ、契約の形を正社員、アルバイト又はパート、派遣社員などに区別していれば、それらの契約形態に応じた制度設計をすることにあまり支障はありませんでしたが、今後はこれが難しくなると考えられます。単純に契約の形式だけではなく、責任の所在や労働条件の相違点などを整理したうえで、これらの相違点からみて合理的な範囲でのみしか、待遇の差異を設けることができなくなる可能性があります。」

「とはいえ、具体的にどの程度の相違点があれば、待遇にも差異を設けてよいのか、現時点では分からないのではないですか。」

「たしかに、これまで同一労働同一賃金や均等な待遇を行っていないことを理由として労働条件を是正するという裁判例は国内において一般的ではないため、海外の事例を検討することになりそうです。今後は、政府からガイドラインにより待遇に差異を設けることができる事例について示される予定ですが、検討には時間がかかるのではないでしょうか。」


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